中小企業診断士の二次試験は、一次試験で学んだ知識を応用できる力が試される試験です。
でも、
- どんな知識が必要なの?
- 一次試験の知識の幅が広すぎて覚えられない
・・・といった悩み、ありますよね。
中小企業診断士の一次試験は、
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
・・・と7科目もあり、覚える知識は大変幅広いです。
二次試験は、それらの知識が備わっていることが大前提であり、かつ、それらの知識を実際の現場(=二次試験の事例企業)で生かすことが問われる試験です。
しかし、実際は、二次試験で必要な知識は限られています。
つまり、二次試験では、必要最低限の知識を覚え、それらの知識を切り口にして事例企業をコンサルできるか(=知識の応用)、それが合格への道です。
ここでは、二次試験の全事例(4事例)において共通知識として必要な一次試験知識と事例ごとに特有な一次試験知識をご紹介します。
診断士一次試験の知識はすでに忘却の彼方という方は、テキストを読む直すことも一つの手ですが、それでは時間がかかります。
そんな皆さんは、経営の枠組みをしっかりと理解できる、以下の書籍もあわせて購読されると良いと思います。筆者も一次試験の復習のために読みました。中小企業診断士の受験生にとっては良本で、良いテキストです。
主に事例Ⅰの組織事例の攻略本といった感じですね。
それでは、以下で二次試験に必要な一次試験知識をご紹介していきます。
目次
中小企業診断士の二次試験で独学者に必要な考え方とは?
企業をコンサルするためには、最も基本的なフレームワークが必要です。
このフレームワークは、中小企業診断士一次試験の「企業経営理論」で学びます。
それは、最上位概念をフェーズ1として、フェーズ4まであります。中小企業診断士の二次試験を解くうえでも、フレームワークを意識して、どのフェーズに該当する設問かを見極める必要があります。
経営戦略を問われている設問に対して、機能別戦略や戦術の内容で解答するのは絶対NGです。フェーズを間違えると0点になる可能性もあるため、気をつけましょう。
独学者は理解必須!中小企業診断士の二次試験に必要な一次試験知識とフレームワークの考え方
では復習の意味でも、フレームワークの内容と一次試験知識、二次試験における考え方(活用方法)をご紹介します。
フレームワークのフェーズ1:経営理念
経営理念は、最も重要な最上位概念です。
経営理念は、創業から受け継げられてきた社長の想いです。
コンサルする相手は社長が主です。事例企業、そして事例企業の社長に寄り添い、社長の想いをしっかりと実現できる提言をすることが重要です。
経営理念が事例の与件文にないか、忘れずにチェックしましょう!
覚えるべき一次試験知識・切り口
フェーズ1で覚えるべき知識は、経営理念のみです。
企業の経営活動を推進するにあたって、前提となる普遍的な考え方を示す経営哲学。経営理念は、創業者の企業精神を示す社是、あるいは従業員の行動指針・行動規範が盛り込まれた社訓、また、お客様に対する企業メッセージが示され、世代を超えて継承されます。
二次試験での応用
「経営理念を答えよ」という直接的な設問は出題されませんが、与件文や設問文から、社長の想いを見つけ出し、解答においてはこれを外さないように、念頭に置いて解答するようにしてください。
フレームワークのフェーズ2:現状分析(環境分析)
現状分析は、外部環境分析と内部環境分析に区分されます。
外部環境とは、企業を取り巻く環境、つまり、政治や経済の動き、社会・宗教的な変遷、人口実態などのマクロ環境、また、競合店の動向や消費者ニーズの変化といった市場や顧客、供給業者等の状況を示すミクロ環境のことを言います。
内部環境とは、企業の保有する経営資源のこと。企業は一般的に、ヒト(人間)、モノ(物、サービス)、カネ(資金)、情報(ノウハウや能力)の経営資源から構成されます。
具体的には、その企業が持つ経営力や従業員の能力、商品開発力、設備や土地、資金力などの有形資源、人脈、ノウハウ、ブランド、信用、こだわり、技術、知識、経験などの無形資源のことです。
コンサルでも二次試験でも、まず「その企業を知る」ことが重要です。
二次試験では、企業の現状を与件文や設問から分析します。そして、企業の進むべき道、企業のあるべき将来の姿は何なのか、またその目標に向けた課題解決策を提言するためにも、この現状分析は非常に大切です。
覚えるべき一次試験知識・切り口
現状を分析する方法はいくつかありますが、中小企業診断士の二次試験では、切り口としてSWOT分析と3C分析を覚えていれば大丈夫です。
企業の内部環境を、強み(S:Strengths)、弱み(W:Weaknesses)、外部環境を機会(O:Opportunities)、脅威(T:Threats)の4つのカテゴリーで分析する方法。
企業の内部環境・外部環境を、市場(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つのカテゴリーで分析する方法。
二次試験での応用
資金や設備などの有形資源は、大企業には勝てません。そのため、無形資源に着目します。無形資源的な企業の強みには、信頼・ブランド・こだわり・技術・ノウハウ・知識・経験・仕組み・ほんもの力・きずな力・コミュニケーション力などがあります。これらは中小企業が生かすべき強みですので、ぜひ、一つの方向性として覚えてください。
設問では、「今後の事業展開に生かせるA社の特徴は?」「B社がこれまで成長してきた強みは何か?」「C社が小規模ながら成長してきた理由は?」と問われます。中小企業の強みに関しては、中小企業診断士の二次試験で活用できる強みはこれだけ!【断言する】で詳しく解説しています。
高齢化社会などの人口動態、法的規制、金利・為替、国民経済の変化、ITの進展、事業承継など社会の構造的な動きはどうか、与件文や設問文から判断します。市場であれば、BtoBなのか、BtoCなのかも押さえるべきです。
方向性としては、ネット販売、高齢者や女性の活用、規模・範囲の経済からスピードやネットワークの経済の実現、こだわり消費、一点豪華主義、顧客価値、サービス消費であり、いかに、顧客ニーズを明確にピックアップできるかが重要です。
マーケティング事例では、ターゲットを直接的に答えさせる設問も出題されます。設問では、「A社が海外進出した外部環境の変化は?」「どのようなターゲットにすべきか?」「市場にはどのような特性があるか?」と問われます。
社会の構造的な変化による脅威も大事ですが、それよりも競合の特長は何か、を押さえるべきです。方向性としては、差別化・集中化・ニッチがあり、競合の特長をピックアップし、事例企業は何を差別化していくかをポジショニングマップ等で分析すること、小さな需要を確実にとること、競争に巻き込まれないこと、を覚えてください。設問では、「競合の特徴は?」「どのような経営環境の変化があるか?」と問われます。
フレームワークのフェーズ3:ドメイン
ドメインとは、事業領域とも呼ばれ、事例企業の全体戦略(経営戦略)です。経営理念や現状分析から、今後の経営戦略を考え、企業の方向性を決定づけます。コンサルにとっても最も責任感のあるフェーズです。
中小企業診断士の二次試験では、経営戦略を問う設問も出題され、また、一貫性のある解答をするためにも、この経営戦略に合致するような戦術やアクションプランなどを各設問で解答する必要があるため、ドメインは明確に設定し、ブレずにいきましょう。
覚えるべき一次試験知識・切り口
製品と市場を、既存と新規にわけて企業の成長戦略を練る手法。
戦略としては4つの方向性がある。1.市場浸透戦略:既存製品を既存市場へ、2.新製品開発戦略:新製品を既存市場へ、3.新市場開拓戦略:既存製品を新市場へ、4.多角化戦略:新製品を新市場へ。
1.コストリーダーシップ戦略:コストで競争優位を確保する戦略。
中小企業には向かない。2.差別化戦略:市場が認知する他社の製品やサービスの価値よりも自社のそれを増加させたり、異なる価値を認知させる戦略。3.集中戦略:特定セグメントに対し、コストや差別化で優位に立つ戦略。
市場占有率を縦軸に、成長性を横軸(軸は縦横反対の場合もある)にとり、製品を4つにカテゴライズすることで、それぞれの製品の戦略や経営資源の配分を策定する手法。
1.花形製品(市場シェア大・成長性大):成長性の高い市場であり、設備投資などキャッシュアウトが多いが、将来的には、「金のなる木」にポジションが移り、収益の柱に。2.金のなる木(市場シェア大・成長性小):成熟市場の中シェアが高く、収益の柱となる。設備投資もあまり必要がない。3.問題児(市場シェア小・成長性大):成長性が高い市場で設備投資が必要。しかし、シェアが低いためキャッシュアウトが多い状態。いかに市場シェアを獲得していくかが課題。4.負け犬(市場シェア小・成長性小):大きな収益をもたらすことは難しい。
二次試験での応用
成長戦略を問われる設問も出題されます。製品面ではどうか、市場面ではどうか、などアンゾフの成長ベクトルの戦略の中でどの象限に該当するかを考えましょう。
また、戦略を練るうえでのシナジー効果とリスクはあるかについて熟慮しましょう。
事例企業がどういう現状におかれ、どのような戦略をとっていくべきかを考えます。戦略を解答するうえでの考え方は、1.S→O(強みを機会に生かす)、2.誰に(ターゲット・市場)、何を(製品・サービス)、どのように(提供方法)です。設問では、「今後の事業展開の方向性は?」「B社が競合に対抗するための戦略は?」と問われます。
フレームワークのフェーズ4:機能別戦略
機能別戦略とは、ドメイン(=事業領域、全体戦略)をより細分化し、全体戦略や企業目標を達成するために、各機能(組織戦略・マーケティング戦略・生産戦略・財務戦略)ではどのような戦略やアクションを実行するかを考えます。
「組織は戦略に従う」という言葉がある通り、企業の目標を達成するためには、全体戦略があり、取り組むべき課題があり、機能別戦略が有機的につながることで一貫性のある企業活動を行います。機能別戦略については、事例ごとで必要な一次知識を説明していますので、以下をご覧ください。
事例Ⅰ:組織・人事事例
事例Ⅰの組織・人事事例で必要な一次試験の全知識と切り口、知識の応用方法については、こちらからどうぞ。

事例Ⅱ:マーケティング・流通事例
事例Ⅱのマーケティング・流通事例で必要な一次試験の全知識と切り口、知識の応用方法については、こちらからどうぞ。

事例Ⅲ:生産・技術事例
事例Ⅲの生産・技術事例で必要な一次試験の全知識と切り口、知識の応用方法については、こちらからどうぞ。

中小企業診断士の二次試験で独学者に必要な全知識と考え方まとめ
結論は、事例企業をフレームワークで考えることが重要です。
以下は、全事例共通のフレームワークを図示化したものです。このフレームワークをもとに、組織事例ではフェーズ4である組織戦略(機能別戦略)をさらに分解したフレームワークで考えます。マーケティング、生産、財務の事例も同様です。
