二次試験の組織事例(事例Ⅰ)で必要な一次試験知識と切り口、知識の活用方法を説明しています。
二次試験で必要な一次試験知識は、全事例共通の知識と事例ごとの特有の知識を覚えれば大丈夫です。
一次試験の知識はすでに忘却の彼方です・・・という方も大丈夫。二次試験で活用する一次試験の知識はごくわずかです。
この記事で紹介している知識さえ覚えておけば、二次試験の組織事例で合格点を勝ち取ることができます。
組織事例(事例Ⅰ)は組織と人事という2つの分野における知識理解が大切です。組織と人事の理解を高めるために、この記事とあわせて以下の書籍を読まれることをおすすめします。
組織事例の試験委員である岩崎尚人氏の書籍です。組織や人事の考え方をしっかりと理解できます。
目次
独学者は覚えるべし!中小企業診断士の二次試験の全知識【組織分野編】
組織は戦略に従うという言葉がある通り、事例企業の戦略を前提として、組織をデザインするのが定石です。
組織戦略には、1.組織構造、2.組織文化という2つの切り口があります。組織について問われる設問に対しては、ほぼ、この2つの切り口で解答することができます。
1.組織構造は、組織におけるハード面、2.組織文化は、組織におけるソフト面の切り口です。
二次試験で活用すべき一次試験の全知識と切り口
組織に関する一次試験知識と切り口はこれだけです。すべてマスターして、組織事例(事例Ⅰ)の解き方をマスターしましょう。
組織5原則
1.専門化の原則、2.権限・責任一致の原則、3.統制範囲の原則、4.命令一元化の原則、5.例外の原則(権限委譲の原則)の5原則がある。
組織のハード面の切り口である。当該原則に従い、戦略にあった組織をどうデザインしていくかがコンサルのポイント。
組織の種類
機能別組織、事業部制組織、マトリックス組織、プロジェクトチーム、タスクフォース、社内ベンチャーなどの種類がある。
現在では、フラット組織やネットワーク組織など、組織・人事間のつながりを意識した組織体制や、情報のスピード化や共有化を狙った組織体制が構築されている。
組織の成立要件
1.共通目的、2.コミュニケーション、3.貢献意欲の3つの要素が必要。バーナードが提唱している。この組織の成立要件は、組織のソフト面の切り口。
二次試験での一次試験知識の応用方法
組織的課題は何か?など、組織に関する設問に対して、ハード面、ソフト面の2つの切り口で考えます。
組織構造
組織のハード面の切り口。組織に関する設問に対し、事例企業の組織はどういう組織で、組織5原則の中で、できている点、できていない点を抽出します。
できていない点があれば、それを改善提案するのが解答の方向性です。
例をあげると、与件文中の「・・・連絡が遅くて受注を逃すケースがある」という記述に対し、「受注権限を営業担当者に委譲することで、意思決定の迅速化を図り受注の機会損失を減らす」といった解答が導けます。
これは例外の原則(権限委譲の原則)という知識を活用した例です。
戦略と整合性がとれているかをはじめ、専門化ができているか、責任と権限は一致しているか、管理やコントロールの幅は適正か、命令系統は一元化されているか、権限委譲や裁量はどうか、など組織の5原則の知識を切り口に、解答の方向性を導きます。
また、事例企業単体だけではなく、異業種連携など連携による組織を構築するような事例では、メリット・デメリットやシナジー・リスクなど汎用的な切り口も使えます。
設問では、「組織上の課題は?」「組織管理上における・・・」といった内容で問われます。
主に使うべき知識として、組織5原則は必ず覚えておき、事例企業ではどうような組織体制なのか、一次試験知識に置き換えて考えてましょう。
組織文化
組織のソフト面の切り口。組織文化では、組織の成立要件の3つを意識します。
まず1つ目である共通目的について、「社長の想いである経営理念は浸透しているか」、「目的が共有されているか」、「強い一体感があるか」、「目的と戦略の不一致はないか」などが着眼点です。
2つ目のコミュニケーションでは、「組織内で円滑な意思疎通ができているか」を意識するようにしましょう。
3つ目の貢献意欲では、「目標達成に向けた意欲向上ができているか」などが着眼点です。
与件文や設問文から事例企業が上記のポイントを実現できていない(例えば、組織的コンフリクトが生じている)のであれば、「できるようにすること」が解答の方向性です。
設問では、「組織上の課題は?」「組織管理上における・・・」といった内容で問われます。人事戦略とも関係の深い分野です。
独学者は覚えるべし!中小企業診断士の二次試験の全知識【人事分野編】
組織を動かすのは、人です。人材の確保から採用、人材育成など仕事でも非常に関連の深いジャンルです。
人事戦略には、1.能力向上、2.モラール、モチベーション向上という2つの切り口があります。
二次試験で活用すべき一次試験の全知識と切り口
人事に関する一次試験の全知識と切り口は以下に記載のとおりです。これだけ覚えておけば人事に関する問題に対して、適切な解答を記述できるようになると思います。
動機づけ・衛生理論
アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した、仕事における満足・不満足に関係する理論。
モチベーション向上に関する理論で、仕事の満足をもたらす要因と不満足をもたらす要因は異なる。仕事の満足感を高めるには、「動機付け要因」にアプローチする。
- 動機付け要因
仕事の達成感、業績承認、仕事そのもの、責任感、昇進、自己成長、職務充実・職務拡大 - 衛生要因
会社の方針、管理・監督、労働条件、給与、人間関係
OJT
On-the-Job-Trainingの略で、実際の職務現場において、業務や仕事を通じて教育を行うこと。企業内教育。
Off-JT
集合研修や講習会、セミナーなど、普段の業務を離れて教育を行うこと。企業外教育。
自己啓発
仕事に関する知識や技術を自主的に習得すること。筆者も自己啓発により中小企業診断士を取得した。職場では、手当や報奨金など、自己啓発を促す制度設計がされている。
二次試験での一次試験知識の応用方法
人事に関しては、モラール向上と能力向上という2つの切り口で考えます。また、現在、多様化している人材スタイルについても押さえておくべきです。
モラール向上
モラール、モチベーション向上では、組織文化同様、組織の成立要件の3つを意識します。さらに、ハーズバーグの動機付け・衛生理論も重要です。
モラールやモチベーションを向上させるには、「動機付け要因」にアプローチする必要があります。一方、不満が多い場合は、「衛生要因」にアプローチする場合もあります。
トップマネジメントはどうか、仕事の達成感を感じられているか、個人が成長できるか、仕事の責任や権限の度合いはどうか、評価や報酬は適正か、などを考えます。
解決策としては、提案制度の設置や目標達成に対するインセンティブなど、事例企業に合わせて解答します。
能力向上
能力向上では、知識・切り口で説明した、OJT、OFF-JT、自己啓発の3つがポイントです。
また、短期的な人材育成と長期的な人材育成など汎用的な切り口でも押さえるべきです。
「人事施策を答えよ」という設問があった場合は、1.モラール向上、2.能力向上という2つの切り口で解答を記述できると良いでしょう。
人材スタイル
現在は、フリーランスも多くなってきたり、副業をしたりと人材スタイルも多様化しています。
正規社員、パート・アルバイト、女性、高齢者など、採用と育成の点での留意点などを押さえるべきです。
働き方改革やワークライフバランス、フレックスタイム制、育児・介護制度など、一次試験の企業経営理論の組織の分野で学んだ内容です。
ただ、あくまでも解答の方向性なので、法律や制度の細かい内容や知識は不要です。
【特別公開】私の頭の中にあった中小企業診断士二次試験の組織フレームワーク【独学者必見】
ここで、試験日当日、私の頭の中にあった組織・人事事例のフレームワークを特別に図示しておきます。
私のようにフレームワークを頭の中に入れ、フレームワークに知識を落とし込み記憶しておくと、試験当日も想起しやすくなると思います。
私は、A4版ノートの見開き全体(A3になる)に、事例ごとにフレームワークを1つずつ記載していました。事例4つで、見開き部分を4箇所使用。
過去問を繰り返し解き、知識を徐々にアップデートしていくのも良いでしょう。
しかし、多すぎても覚えられないので、このサイトに記載してある知識や切り口を最低限押さえるようにしてください。
フレームワークについてはこちらで詳しく記載しています。

中小企業診断士の二次試験【組織・人事】に必要な全知識まとめ
中小企業診断士の二次試験(事例Ⅰ:組織・人事事例)に必要な一次試験の全知識と切り口、考え方、解答の方向性について紹介しました。
一次試験科目である企業経営理論の組織論のように法律的な細かい知識は不要です。
あくまでも戦略に従い、組織の課題解決や組織をどうデザインしていくかが重要で、この記事で紹介した組織や人事の考え方を覚えておくべきです。
事例Ⅱ(マーケティング・流通事例)で必要な全知識はこちらからどうぞ!
